なぜ接骨院で超音波エコーが必要なのか?5分でわかるメリット
こんにちは!当院では接骨院として、日々多くの患者さんのケガや痛みと向き合っています。
今回は「なぜ接骨院で超音波エコーが必要なのか?」
というテーマで、そのメリットを分かりやすくお話しします。超音波エコー検査とはどんなものか、レントゲンとの違い、具体的な活用例、そして導入による患者さん側のメリットについて、5分ほどで読める内容にまとめました。専門用語にはカッコ書きで補足説明を加えていますのでご安心ください。それでは早速、エコー検査の基本から見ていきましょう。
超音波エコー検査とは?レントゲンとの違い

写真のように、患部に専用のプローブ(探触子)という機械を当てて体内を観察します。超音波エコー検査とは、人の耳には聞こえない高周波の音(超音波)を患部に当て、その反射で体内の状態を画像化する検査方法です。たとえば筋肉や靭帯(じんたい:関節を支える組織)、腱(けん:筋肉と骨をつなぐ組織)、骨の表面などをリアルタイムでその場に映し出すことができます。痛みは全くなく非侵襲的(体を傷つけない)で、放射線を使わないため身体への負担もありません。つまり、妊娠中の方や小さなお子さんにも安心して何度でも検査を行える安全な方法なのです。
一方で、整形外科などでよく使われるレントゲン(X線)は放射線を用いる検査で、主に骨の状態を撮影するものです。レントゲンでは骨折など骨の異常は写し出せますが、筋肉や靭帯などの軟部組織(柔らかい組織)は映りません。超音波エコーはレントゲンでは見えない軟部組織(筋肉・腱・靭帯、関節内部の状態など)を確認できるため、ケガや痛みの原因を特定するのに非常に役立ちます。さらに画像がリアルタイム動画である点も大きな違いです。エコーなら患部を動かしながら観察できるため、靭帯がどの程度伸びているか、関節の動きに伴って筋肉や腱がどう動くかなど、その場で詳細に把握できます。総じて、エコーは「見えないものを見えるようにする」だけでなく、「今この瞬間の身体内部の様子」を安全に映し出せる優れた検査なのです。
エコー検査が特に役立つケガ・症状の例
超音波エコーは様々なケガや症状の評価に有用ですが、特に以下のようなケースで威力を発揮します。
- 足関節捻挫(足首のねんざ): 捻挫による靭帯損傷の有無や腫れ具合をその場で確認できます。靭帯が部分的に切れていないか、どの程度伸びて損傷しているかをエコーで観察し、必要な固定やサポートの判断に役立てます。レントゲンでは写らない靭帯の断裂も、エコーなら見逃しません。
- 肉離れ(筋肉の部分断裂): ふくらはぎや太ももなどの筋肉がブチッと切れてしまう肉離れでは、筋繊維がどの程度断裂しているかをエコーで精密に評価できます。筋肉内部の出血や炎症の様子も映し出せるため、回復までの期間予測や適切なリハビリ計画の立案に役立ちます。
- 肩の腱板断裂(肩のインナーマッスルの腱の断裂): 肩の奥には腱板という腱のグループがあり、断裂すると腕が上がらないなど重い症状が出ます。エコー検査を使えば、この腱板の断裂の有無をその場でほぼ確実に見分けることができます。近年の報告では、大きな腱板断裂や関節内の腫れ(関節水腫)についてエコーで約99%の確率で診断可能だともいわれています。レントゲンでは初期の腱板断裂は分かりませんが、エコーなら直接確認できるので、早期から適切な治療方針を立てることができます。

左の画像は足首の靭帯が損傷して黒く腫れている様子、右の画像は正常な足首の靭帯で白い線維が綺麗に見えています。超音波エコーではこのように靭帯や筋肉の損傷度合いを直接その場で確認することができます。エコー導入により、「靭帯がどのくらい傷ついているのか?」をその日のうちに把握できるのです。
上記の他にも、肘の靭帯損傷や野球肘(成長期の肘の障害)、膝の半月板や靭帯のトラブル、アキレス腱の断裂疑いなど、軟部組織のケガ全般でエコーは有効です。骨折についても、骨表面のヒビ(骨微細骨折)や骨から剥がれるような特殊な骨折(裂離骨折)でエコーが有用な場合があります。レントゲンだけでは見逃しがちな所見もエコーで補足できるため、総合的にケガの状態を見極める精度が高まるのです。
接骨院でエコーを導入する患者さんのメリット
接骨院の現場にエコーを導入することで、患者さんにはさまざまなメリットがあります。その代表的なものを挙げてみましょう。
- 早期発見・早期対応: エコーがあると、捻挫や筋肉損傷などの軟部組織の損傷をその場で早期に発見できます。従来は痛みや腫れ具合から「おそらく○○でしょう」と推測して処置していたものも、エコー検査によって原因を確実に突き止められます。例えば骨には異常がない捻挫でも、「靭帯が部分的に切れているかどうか」を即座に確認できるため、見立て違いによる処置の遅れを防ぎ、治療開始のタイミングを逃しません。結果として回復も早まり、後遺症リスクの軽減につながります。
- 患部の状態を可視化: 超音波エコーは検査中の映像をモニターに映し出せるため、患者さんと一緒に自分の患部の状態を“見て確認”することができます。静止画ではなく動く映像で筋肉や靭帯の様子が見えるので、「ここがこんなふうに傷ついています」と目で見て説明を受けられます。そのため患者さんにとっても納得感が得られやすく、自分のケガを理解しやすいというメリットがあります。
- 回復過程の見える化: エコー検査はケガの経過観察にも大いに役立ちます。たとえば、肉離れ後の筋肉がどれくらい再生してきているか、捻挫で伸びた靭帯がどの程度修復されたか等を、リハビリ中に定期的にエコーでチェックできます。画像で回復具合を明確に把握できるので、治療プランや運動の強度を適切に調整することが可能です。「前回より腫れが引いて靭帯がしっかり写っていますね」など、良くなっている様子が見て取れると患者さんも前向きになりますし、もし経過が思わしくない場合も早めに対策を講じられます。
- 安心感・信頼感の向上: エコーで体の中を“見える化することは、患者さんの大きな安心感につながります。痛みの原因がはっきり映像で確認できると「ちゃんと原因が分かった」「適切な処置をしてもらえている」と感じられますよね。これは患者さんの不安解消につながり、施術者への信頼感向上にも寄与します。「なんとなく湿布を貼って様子見」というより、エコー画像を示しながら「ここに炎症がありますので、このように治療しましょう」と説明されたほうが安心できるのは言うまでもありません。実際、安全かつリアルタイムに状態を確認できるエコーは、患者さんにとっても安心感があり的確な施術につながるとの声も多いです。
10年以上エコーを活用してきた柔道整復師の経験談
私(筆者)は柔道整復師として約10年以上前から超音波エコーを現場で活用してきました。当時はまだ整骨院・接骨院でエコーを置いているところは少なかったのですが、それだけにエコー導入の効果を早くから実感しています。例えばある患者さんはバレーボールで足首を強く捻挫し、「骨は大丈夫だけど靭帯が伸びたのでしょう」と整形外科で言われました。しかし痛みが強いため当院を受診され、エコー検査をしたところ外くるぶしの靭帯(前距腓骨靭帯)の断裂が確認できました。レントゲンでは異常が写らなかった部分です。エコー画像をお見せしながら状態を説明すると患者さんも「靭帯が切れていたんですね」と納得され、その後は適切な固定とリハビリで順調に回復しました。「エコーで見てもらえて安心した」と言っていただけたのが印象的です。
また別のケースでは、太ももの肉離れを起こした学生さんにエコー検査を行い、筋断裂の範囲を測定して治癒までの見通しを立てたり、肩の痛みを訴える中高年の方にエコーで腱板断裂の有無をその場で確認し、必要に応じて専門医への紹介を早期に行うこともできました。**エコーがあることで「その場ですぐ原因がわかる・判断できる」**場面は非常に多く、患者さんの治療計画を立てる上でも大きな武器になっています。
当院では最新式のエコー機器(カラードップラー機能、SMI機能、シアウェーブエラストフラフィー付き)も導入しており、微細な損傷や炎症の有無まで観察が可能です。エコー画像に血流の反応(ドップラー信号)を映し出すことで、ギプスやサポーターで固定している期間中でも内部の治癒反応を確認できます。これにより「固定具を外すタイミング」や「リハビリを開始してよい時期」をより正確に医学的根拠をもって判断できるようになりました。私自身、このエコーを活用した臨床経験を学会や研修会で数多く発表してきました。現在は日本超音波骨軟組織学会(運動器エコーの専門学会)の評議委員も務めており、同学会認定の「基礎運動器系超音波技師」という資格も取得しています。エコー技術と知識の研鑽を積み重ねてきた専門家の立場から、自信を持って言えることがあります。それは、「エコーは接骨院の診療になくてはならないもの」だということです。

まとめ:安心と最適な治療のためにエコーを活用しましょう
超音波エコー検査は、接骨院におけるケガの評価・治療において革命的なツールです。レントゲンでは見えない軟部組織の状態を可視化し、早期発見と的確な治療方針の決定を可能にしてくれます。筆者自身の10年以上にわたる経験からも、エコーを取り入れることで治療の質が大幅に向上し、患者さんの安心感・満足度も高まることを実感しています。
痛みの原因がわからず不安なとき、なかなか良くならないケガに悩んでいるときこそ、エコー検査の出番です。接骨院での施術と聞くと電気治療やマッサージを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、当院ではそれに加えて画像診断の技術も駆使して総合的にサポートしています。「隠れた痛み」を早期発見し、もう手遅れにしない!——エコー検査を活用することで、そうしたモットーのもと患者さんに安心と最適な治療を提供できるのです。ケガの際には無理をせず、ぜひ一度エコー検査によるチェックにいらしてください。私たち専門家が責任をもって状態を確認し、今後の治療プランについて丁寧にご説明いたします。
一緒に早期回復を目指してがんばりましょう!
参考文献
- Use of a comprehensive systemic ultrasound evaluation in the diagnosis of acute lateral ankle sprain
BMC Musculoskeletal Disorders, 2023. - Diagnostic accuracy of ultrasound for rotator cuff tears
Orthopaedic Journal of Sports Medicine, 2019. - Ultrasound imaging in sport-related muscle injuries
Open Access Journal of Sports Medicine, 2021. - Ultrasound of Skeletal Muscle Injury: An Update
Seminars in Musculoskeletal Radiology, 2010. - Ultrasound Detection of Rotator Cuff Tears: Observer Agreement and Diagnostic Accuracy
American Journal of Roentgenology, 2010. - Role of Ultrasound in Evaluating Ligament Injuries Around the Ankle
Diagnostics, 2023. - Ultrasound imaging in musculoskeletal injuries—What the orthopaedic surgeon should know
World Journal of Orthopedics, 2019. - 接骨院における超音波観察装置の運用マニュアル(第 4 版 第1刷)/一般社団法人 日本超音波骨軟組織学会2023