主に野球などでボールを投げる側の肘が痛くなる『野球肘』『投球障害肘』について 一般の方にも分かりやすく解説をしていきます。 野球肘は『早期発見』『予防』がとても重要なケガで、多くの方に知って頂きたい内容です。
【内容】
・野球肘って何?(病態について)
・場所によって違う?内側・外側・後方野球肘の違い
(部位別・離断性骨軟骨炎に重点)
・野球肘の検査方法(超音波エコー・MRI、レントゲン)
・野球肘の治療方法(保存・外科的)
・野球肘の予防方法(投球数・原テスト・投球フォーム)
・野球肘のセルフチェック ・定期的な検査の重要性(超音波エコー)
【野球肘って何?(病態について)】
野球肘は、主に投球を続けることで起こる肘の痛みや障害を指します。 医学的には障害されている部位によって「内側側副靭帯損傷」や「離断性骨軟骨炎」と呼ばれる状態であり、各組織が損傷することが特徴的です。
特に、野球肘で多く障害される部位の『内側側副靭帯』は、肘の内側に位置し肘関節の安定性を保つ役割を果たしています。投球時には非常に高い負荷がかかりますが、正常な状態ではこの靭帯がしっかりと負荷を吸収します。
しかし、反復的な投球や適切なフォームの欠如によって、内側側副靭帯が過度にストレスを受け、徐々に損傷していきます。初期段階では軽度の痛みや違和感が現れる場合がありますが、無視したり放置したりすると炎症が進行し、慢性的な痛みや機能障害が現れる恐れがあります。
特に若い選手や成長期の選手に多く見られる野球肘は、未発達の骨格が影響しています。成長期における過度な投球は、内側側副靭帯に過剰な負荷をかけることにつながりやすく、これが野球肘を引き起こす一因とされています。
【部位によって違う?内側・外側・後方野球肘の違い】
一般的に野球肘は肘の内側に発生することが多いですが、実は肘のあらゆる部位に発症します。部位や年齢によって注意すべきことが変わりますので、知っておくと対策にとても有用です。
1、 内側型野球肘
痛みの場所:主に肘の内側に痛みが生じます。
障害されているもの:・内側側副靱帯・上腕骨内側上顆・尺骨神経など
投球障害の約8割が内側に生じると言われており、成人では靱帯が損傷し、成長期では骨折をするなど投球不能になってしまうものもあります。内側の損傷後に肘が不安定になり外側や後方などの野球肘につながっていくこともあり、とても注意が必要な病態です。
2、 外側型野球肘
痛みの場所:主に肘の外側に痛みが生じます。
障害されているもの:・上腕骨小頭・撓骨頭・外側靱帯・撓骨神経など
外側に起きる野球肘で特に気をつけなければならないのは、成長期の上腕骨小頭の『離断性骨軟骨炎(OCD)』です。これは、上腕骨小頭という部位の軟骨が障害されてしまう病態で肘の曲げ伸ばしが出来なくなってしまったり、痛みで投球が不能になることもあります。
野球を続けながら自然に治ることが難しい場所で進行すると手術をしなければ治癒することがない、“最も気をつけるべき野球肘”です。
3、 後方型野球肘
痛みの場所:主に肘伸ばした時に肘の後方に痛みを生じます。
障害されているもの:・尺骨肘頭・上腕三頭筋腱・上腕骨肘頭窩など
肘の後ろ側に投球時、特にボールリリース時や肘を伸ばした際に痛みが生じることが多いのが特徴です。
この部位の痛みは比較的高校生や成人などの骨の“成長期が終了した人に多い”のが特徴です。
肘の可動域や投球フォームの異常が原因となることが多く、手術などになることは稀ですが、日常のケアが重要で中には骨が変形していることもあるので、レントゲン検査やエコー検査を早めに受けることも大事です。
【野球肘の検査方法】
野球肘の正確な診断には、専門的な検査が必要です。 以下に、野球肘の検査方法について説明します。
・痛み歴史と症状の詳細な問診
痛みがいつからなのか?症状は強くなっているのか?などの詳細に確認することから始まります。過去の投球経験や痛みの発生時期、症状の程度などを把握します。
・身体検査
腫れや赤み、変形があるかどうかを確認します。本人が気づかないうちに変形をしていることは珍しくありません。
・可動域制限の評価
肘関節の可動域を評価します。特に肘の屈曲や伸展の制限があるかを確認します。
・圧痛の評価
医師は特定の部位に圧力をかけて痛みの反応を評価します。内側側副靭帯や関連する組織の痛みを確認します。
・機能的テスト いくつかの特殊なテストが行われる場合があります。
Valgus Stress Test: 内側へのストレスをかけて内側側副靭帯の状態を評価します。
Milking Maneuver: 肘を曲げた状態で前方に押すことで、内側側副靭帯の状態を確認します。
・画像検査
X線、MRI、超音波などの画像検査が行われる場合があります。これによって骨や靭帯の損傷の程度が評価されます。
・運動機能の評価
投球の動作を行い、痛みや制限があるかどうかを確認します。例えば、投球動作の模擬などが含まれます。 これらの検査を組み合わせて、野球肘の正確な診断を行います。適切な診断がされた場合は、適切な治療プランが立てられ、早期の回復が期待されます。
【野球肘の治療方法(保存・外科的)】
野球肘は痛みが強い傾向があり、症状が出てからの期間が長いなどが無ければ基本的に“保存療法”となります、
保存療法は手術をせずにギブスを巻き固定する治療を行うということになります。固定を外した後は、患部(肘)の可動域改善をはかるストレッチや筋力トレーニングを行います。
野球肘には近年様々な物理療法が用いられることも多くなっており、その中でも『体外衝撃波(ESWT)』は注目をされています。体外衝撃波は腎臓結石を治療していたものを“関節や靱帯・筋肉”に使用できるよう応用されており、
野球肘に対しても有効性が認められています。
内側型野球肘の外科的治療(手術)の例としてはでは
『トミージョン手術』があり近年では大谷選手が受けたこともあり注目を浴びています。
外側型野球肘では軟骨移植手術なども行われ、
いずれの場合も、基本的に保存療法が第一選択肢であることには違いなく、将来設計など検討し“投球制限”や“利き手交換”なども同時に検討されます。
【野球肘の予防方法】
野球肘は痛みなどで投球に支障をきたしてしまい、
なかには1年以上も投球が出来ないとこもあります。
そこでとても重要なことは『野球肘を予防する』ということです、 野球肘に関しては様々な研究がされており
・投球制限・投球フォーム・身体作りを行う事で、一定に予防が可能です。
【野球肘のセルフチェック】
① 痛みの場所
② 肩関節の可動域
③ 肘関節の可動域
【痛みが出る前に!定期チェックが重要】
野球肘は一度症状が出現すると一定の治療期間が必要になり、重要な試合では“痛みを抱えながら出場せざるを得ない“治療のために試合に出れない”などの辛い状況になる例が多く、私等の様な治療リハビリに関わる側にとっても胸の痛いケガです。
実は、痛みが出るまでには前兆があることも多く、それを早期に確認して適切な対策をとることで、安全に野球が出来ることに繋がります。 その為には、定期的な検査をすることが重要であ特に、エコー検査や患部の状況を見る上で有益とされています。
【当院での取り組み】
当院ではエコーを使用した検査が可能です。エコー検査以外にも野球肘や投球障害になりやすくなっていないかを検査する『フィジカルチェック』も行っています。
適切な医療機関との連携も力を入れておりますので、
“今は痛く無いけど野球肘が心配!”
“以前野球肘になって再発しないか心配!!”
“野球をしていて、自分にあった詳しく身体作りを知りたい!!”
“ケガなく野球やスポーツを楽しみたい、選手として夢を叶えたい!”
その様な方はぜひ一度受けてみてください^^
長文となりましたが、最後までお読み頂きありがとうございます。
私達は 『ケガでスポーツの夢を諦めさせない』という思いで治療だけでなく“予防”にも力を入れております。野球だけでなくスポーツに痛みやケガでお悩みの方は一度ご相談頂けますと幸いです。
参考文献
1)Age-Specific Prevalence and Clinical Characteristics of Humeral Medial Epicondyle Apophysitis and Osteochondritis Dissecans: Ultrasonographic Assessment of 4249 Players/ootoshi
2)学童野球トップレベル選手に実施した野球肘検診の結果/takahashi
3)原テストと投球時肩痛との関連/makino
4)Risk Factors for Baseball-Related Arm Injuries: A Systematic Review/ Cristine E. Agresta,
5)Elbow Ulnar Collateral Ligament Injuries in Throwing Athletes: Diagnosis and Management /Max D. Gehrman
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