疲労骨折を防ぐ為に!RED-S(レッヅ)って何だ?

『疲労骨折』という骨折をご存知でしょうか? 繰り返しの骨に対する物理的ストレスが加わり金属疲労のように 骨折に至ってしまうのが『疲労骨折』です。

その原因は過度な運動や間違ったフォームなどのスポーツ特有のものと 実は、栄養不足が原因とされています。

『疲労骨折』は2014年にIOC(国際オリンピック委員会)が提示した RED-S(相対的エネルギー不足)ということが大きく関わっているとされています。

今回そのRED-Sについてご紹介させて頂きます。 特にスポーツを頑張っているアスリート、育成年代のお子様をお持ちの方の参考になればと思います。

  • ①こんなにも多い疲労骨折について
  • ②疲労骨折は、なぜ起きる?
  • ③疲労骨折の原因RED-Sについて
  • ④RED-Sの予防方法
  • ⑤疲労骨折の治療方法(LIPUS治療、衝撃波治療)

①こんなにも多い疲労骨折について

全国高校駅伝参加選手を対象とした2014年の調査によると、男子で32.0% 女子選手で32.9%と全選手の1/3以上の選手が疲労骨折を経験しており、これは1994年の調査(男子19.0%女子14.9%)よりも増加傾向であることがわかっています。

    (疲労骨折は近年では増加傾向)

また、同じ駅伝の中学生を対象としたものでは 2016年の全国中学駅伝大会に出場した406名のアンケート結果では男子21.5% 女子20.1%に疲労骨折の経験があるという調査結果があり

駅伝以外にも 12歳から15歳で腰痛を訴える子供223人の調査によると124名55.6%に『腰椎初期分離症』という腰の疲労骨折があったという調査があります。

疲労骨折の調査はまだまだ日本において発展途上とされていますが、現在、明らかになっているものでも スポーツを行なっているアスリートや成長期の子供には私達が

想像している以上に身近であり、誰にでもなりうるケガであることを注意しておきたいです。

②疲労骨折は、なぜ起きる?

では疲労骨折はなぜ起きるのでしょうか?

骨は爪が伸びたり、肌が常に生まれ変わっていることと同様に 実は常に新陳代謝を繰り返しています。その新陳代謝は、骨を作る『骨芽細胞』と骨を破壊する『破骨細胞』がお互いのバランスをとりながら 骨を状況に合わせて常に入れかわりが行われています。

このバランスが崩れた状態で疲労骨折が発生します。具体的には骨を強くする『骨芽細胞』の働きが弱いと骨を作る機能が弱ってしまい『破骨細胞』の働きに負けてしまい『骨がスカスカ』のような状態の『骨粗鬆症』の状態になります。

スポーツ活動では物理的ストレスが骨に働き続けて『マイクロクラック』というとても小さな骨折が起きます。『骨芽細胞』の働きが旺盛または正常であれば『疲労骨折』に至ることはありませんが、運動による『マイクロクラック』の積み重ねが強く広範囲の場合で低栄養などが原因で『骨芽細胞』の働きが弱くなっていると『疲労骨折』の状態に陥ります。

(マイクロクラックの積み重ねで疲労骨折に)
     (マイクロクラックの積み重ねで疲労骨折に)

③疲労骨折の原因RED-sについて

RED-S(相対的エネルギー不足:Relative Energy Deficiency in Sport)は2014年IOC(国際オリンピック委員会)が提示し、摂取するエネルギーが運動で消費するエネルギーに比べて不足してしまうことにより様々なケガや病気のリスクが高くなるという注意がされています。

それまでは女性を対象としたFAT(相対的エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症)という概念がありましたが男性アスリートにも栄養不足によるトラブルが多いことから RED-Sという概念が提示されています。

RED-Sは骨粗鬆症のリスクを高くするだけでなく免疫低下、発育障害、性ホルモン低下、心理面のトラブルなど様々な障害の原因とされています。

  (相対的エネルギー不足:Relative Energy Deficiency in Sport)

④RED-Sの予防方法

RED-Sの予防には性別、年齢に関わらず必要なエネルギーを摂取することが重要です。

特に運動を行なっている場合は運動に必要なエネルギーにプラスして日常生活や成長の必要な栄養を摂取しなければなりません。

成長期はとくに成長に必要なエネルギーや栄養素が運動にのみ消費されていて、本来成長に使うべき栄養が足りないということになると低身長や疲労骨折やケガの原因につながることになります。

(予防には運動に必要なエネルギーと成長に必要なエネルギー両者を意識して摂取する必要性がある)

  ・特に不足しがな栄養素  

  • カルシウム(日本人一般的に不足傾向で食品にも不足傾向)   
  • 鉄分(特に女性は不足しがちで運動をしていると踵からの衝撃で血球が破壊されてスポーツ貧血の原因に)   
  • ビタミンDおよびK(特に日照時間が減る時期に不足し疲労骨折の原因になることが多い)
  • ビタミンC(筋肉や軟骨・皮膚のコラーゲン合成に作用していて日本人に不足がち、近年で注目されている疲れやすさの原因副腎疲労の原因にもなっている)  
  • ビタミンB(体のエネルギー合成に必要で、不足すると疲れやすくなったり、肌荒れの原因などになる、激しく運動をしていたりする人は積極的に摂取したい栄養素)

 ・アスリートの食事の基本形

 RED-Sを予防するには、適切な栄養素を毎日摂取する必要があり、甘いものでエネルギーを摂取しているとこのバランスが崩れることになるので、下図にあるような基本形を意識することが重要とされています。」

 ・サプリメントとどう付き合うか  

毎日、食事で必要な栄養素が補えるというのは”理想”ではありますが、現実にはかなり難しく専属の栄養士でもいない限りは難しいのが現実です。その場合が食事だけでは完璧を目指さず、サプリメントで補うことが現実的でオススメです。

 ・サプリメントの選び方

  • 目的の成分での配合
  • 原料の原産国最終加工国
  • 健康食品GMP認定工場がされているか?

などは関心をもって摂取されることをオススメ致します。

  (食事だけ必要量を摂取するのはかなり難しい、適切なサプリメントで摂取を)

⑤疲労骨折の治療方法(LIPUS治療、衝撃波)

では、疲労骨折になってしまった場合はどうしたいいのでしょうか?

一定期間のスポーツ活動の中止や安静が基本的な治療になりますが 近年では様々な治療機器が開発・活用されていて疲労骨折の治癒促進や治療効果も向上の成績をあげています。  

・LIPUS(低出力超音波パルス治療)

主に骨折全般の治療に使用されている機器になります、通常の超音波治療より弱い出力で短い照射時間を繰り返し骨折に施行することにより、骨芽細胞の活性を促します。骨折全般の治癒促進データでは概ね40%の治癒期間短縮が認められており、疲労骨折にも有効であるとされておりスポーツ選手では積極的に使用されています。

医療機関での使用が可能ですが保険適応でなく接骨院でも自費治療として使用が可能です。

(骨折においての継続した治療にはかならず医師の同意が必要です。柔道整復師や医師以外での骨折治療は医師法・柔道整復師法違反となります。)

    (骨折・疲労骨折に有効なLIPUS治療)

・対外衝撃波治療

音速よりも高速の衝撃を機械的刺激を加える装置でもともとは腎臓結石を粉砕するために医療機関で取り入れられるようになったもので、それを骨や筋肉、靭帯などの応用しスポーツ外傷にも積極的に採用されています。疲労骨折にも高い効果を認められていて近年では整形外科を中心に活用されています。

接骨院でも超音波エコーの普及にともない疲労骨折の患部を可視化して衝撃波治療を行う接骨院も全国的に増えてきています。

衝撃波治療機器には集中型衝撃波(FSWT)拡散型衝撃波:圧力波(RPWT)の二種類存在しその内FSWTは医師にしか扱えない治療機器となり衝撃力が強く照射することができます。

近年では疲労骨折においては0.2ミリジュール前後という強さが適しているとされていますが、この強さは拡散型衝撃波(RPWT)にも十分可能な強さです。

RPWTは比較的安価で施術をうけることが可能ですので継続治療が必要な疲労骨折の治療においてはRPWTで適しているとも言えます。

*ただし腰や大腿部などの筋肉が厚い部位はFSWTが向いていると考えられます。

   (FSWTは医師のみ RPWTは疲労骨折にも使え比較的安価)

長文になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。

RED-S予防はどの年代、どの性別でも重要です しっかり予防をしていつまでもスポーツが出来る身体作りをしていきましょう

当院では、スポーツ栄養士による相談会も行なっております、是非RED-Sが気になる 具体的な献立作成を知りたい!そんな方は是非ご利用ください!

参考文献)

倉持梨惠子,鳥居俊,6大マラソン大会参加選手における疲労骨折の発生 田原圭太郎,発育期の疲労骨折とその予防,子供もと発育発達,2019

関連記事

  1. 【骨折を早く治す方法】治癒期間が40%短縮?骨折用治療器 L…

  2. オスグッド病の原因!? 〜姿勢編〜

  3. オスグッド病の原因⁉︎ 〜足部の重心編〜

  4. 足関節捻挫の原因と対処法、治療の必要性 ~PEACE &am…

  5. 野球肘の予防に重要!? 〜肩の柔軟性〜

  6. 走るとスネが痛い!?シンスプリント(MTSS)かもしれません…

PAGE TOP