先に結論
腰痛のほとんどは重い病気によるものではありませんが、まれに骨折・がん・感染症・神経の強い圧迫が隠れていることがあります。その手がかりになる症状を「レッドフラッグ(危険信号)」と呼びます。とくに尿や便が出にくい・漏れる、股のまわりの感覚がにぶいときはすぐに救急外来を受診してください。研究では、がんの治療歴や長期間のステロイドの服用、強い外傷のあとの痛みが重い原因の手がかりとして大切だとわかっています。
Q. 腰痛で病院にすぐ行くべきサインは?
A. 尿や便の異常、股のまわりのしびれ、両脚の力が急に入らない場合はすぐに救急外来へ。発熱・原因不明の体重減少・がんの治療歴・強い外傷のあとの痛み・夜間も続く痛みがある場合は早めに医療機関を受診してください。
腰痛で接骨院や整体に通う方は多いですが、腰痛の中には施術で様子を見てはいけないものがまれにあります。どの症状が危険信号なのかを知っておくと、必要なときに迷わず受診できます。
すぐに救急外来へ行くべきサイン
- 尿が出にくい・漏れる、便が漏れる
- 股のまわりやお尻の内側の感覚がにぶい(サドルが当たる部分)
- 両脚に急にしびれや力の入りにくさが広がってきた
腰の神経の束(馬尾:ばび)が強く圧迫されているサインで、早く手術が必要になることがあります。研究では、これらの症状は「あれば強く疑う」手がかりになる一方で、ないからといって完全には否定できないことがわかっています【1】。少しでも当てはまるときは迷わず受診してください。
早めに医療機関で確かめたいサイン

| 疑う原因 | 手がかりになるサイン |
|---|---|
| 背骨の骨折 | 転倒や事故など強い外傷のあと/高齢/ステロイドを長く飲んでいる/骨粗しょう症/背中を軽くたたくと強く痛む |
| がん | がんの治療歴がある/原因不明の体重減少/安静にしても夜間も続く痛み |
| 感染症 | 発熱・寒気/免疫を抑える薬を飲んでいる/最近の手術や点滴 |
| 内臓や血管の病気 | 体を動かしても痛みが変わらない/胸やお腹の痛みを伴う/脈打つような痛み |
| 神経の強い圧迫 | 脚の力が落ちてきた(つま先立ちやかかと歩きができない)/しびれが広がってきた |
レッドフラッグはどれくらい当てになる?
レッドフラッグは診療ガイドラインごとに挙げられている項目が少しずつ違い、すべてが同じように当てになるわけではありません【2】。研究のまとめでは、次のサインが重い原因の手がかりとして比較的強いと報告されています【3】。
- 背骨の骨折:ステロイドを長く飲んでいる人で約3人に1人、強い外傷のあとで約1割、打撲や擦り傷があると6割強に骨折が見つかっていました。複数のサインが重なるほど骨折の可能性は高くなります。
- がん:がんの治療歴がある人の腰痛では、約3人に1人にがんが関係していました。
一方で「年齢」や「夜の痛み」だけでは当てはまる人が多すぎて、それだけで重い病気とは言えません。ひとつのサインだけで不安になりすぎず、いくつか重なるとき・経過がおかしいときは早めに確かめるのが現実的な考え方です。
レッドフラッグがないときの腰痛
レッドフラッグがない腰痛は、多くが筋肉・関節・椎間板などの負担によるもので、時間とともに軽くなっていきます。寝込まずに動ける範囲で生活し、体の使い方を整えることが回復の近道です。急にひねった・重い物を持ったなどのケガによる腰痛は、接骨院で状態を確かめて施術を受けられます。
- 脚へのしびれがある腰痛 → 「坐骨神経痛」「腰椎椎間板ヘルニア」
- 歩くと脚がしびれる → 「腰部脊柱管狭窄症」
- 腰をそらすと痛い成長期の子ども → 「子どもの腰痛と腰椎分離症」
施術を続けていても痛みが強くなる・しびれが広がる・熱が出てきたなど、経過の途中で様子が変わったときはその都度相談してください。
よくある質問
Q. 夜に腰が痛むのは危険ですか?
A. 夜の痛みだけで重い病気とは言えません。寝返りで痛むのは筋肉や関節の痛みでもよく見られます。安静にしていても強い痛みが続く、発熱や体重減少を伴う場合は早めに受診してください。
Q. 高齢者の腰痛で注意することは?
A. 骨粗しょう症があると、尻もちなど軽い転倒でも背骨の骨折が起こることがあります。転んだあとから腰や背中が痛む場合は骨折を疑って確かめてください。
Q. レッドフラッグがなければ接骨院に通っていいですか?
A. はい。重い原因が疑われない腰痛であれば、接骨院で施術や運動療法を受けられます。経過の途中で様子が変わったときは相談してください。
Q. 腰痛で尿が出にくいのはなぜ危険ですか?
A. 腰の神経の束が強く圧迫されているサインで、時間がたつと排尿や脚の機能が戻りにくくなることがあります。すぐに救急外来を受診してください。
Q. 腰痛でまず受けるべき検査はありますか?
A. レッドフラッグがない腰痛では、すぐに画像検査をしなくても経過は変わらないことが多いとされます。サインがある場合や経過がおかしい場合に検査を検討します。
参考文献
- Dionne N, et al. What is the diagnostic accuracy of red flags related to cauda equina syndrome (CES), when compared to Magnetic Resonance Imaging (MRI)? A systematic review. Musculoskelet Sci Pract. 2019;42:125-133.
- Verhagen AP, et al. Red flags presented in current low back pain guidelines: a review. Eur Spine J. 2016;25(9):2788-802.
- Downie A, et al. Red flags to screen for malignancy and fracture in patients with low back pain: systematic review. BMJ. 2013;347:f7095.













