先に結論
- LIPUSは温める目的の超音波よりはるかに弱い出力(30mW/cm²)で骨に刺激を届ける治療器です【1】
- 子どもや中高生の前腕骨折・槌指(突き指の骨折)・腰椎分離症・舟状骨の骨折に使った研究があり、重い副作用は報告されていません【2〜6】
- 成長期のウサギの成長軟骨の近くに当てた実験では、骨の成長を止めてしまう変化(骨性架橋)は見られませんでした【7】
- 当院ではエコーでケガの状態を確かめ、お子さんと保護者の方に使い方をご説明してから始めます。痛みや熱さはほとんどなく、横になっている間に終わります
LIPUSとは:温めない弱い超音波
LIPUS(リーパス:低出力超音波パルス)は、骨折や疲労骨折の部位に弱い超音波を1日20分ほど当てて、骨がつく過程を後押しする治療器です。くわしいしくみは「骨折用治療器LIPUSの作用」でご紹介しています。
| 項目 | LIPUS | 温める目的の超音波(一般的な物理療法) |
|---|---|---|
| 出力の強さ | 30mW/cm²(0.03W/cm²)【1】 | およそ0.5〜3W/cm² |
| ねらい | 骨の細胞に弱い刺激を届ける | 筋肉などを温める |
| 当て方 | パルス(断続的)に1日20分ほど | 連続またはパルスで数分 |
数字で比べると、LIPUSの出力は温める目的の超音波のおよそ20分の1から100分の1です。皮膚の上から当てるだけで、痛みや熱さを感じることはほとんどありません。
子ども・中高生に使った研究
「成長期の子どもに使っても大丈夫?」という質問をよくいただきます。子どもや中高生にLIPUSを使った主な研究は次のとおりです。
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| 前腕の骨折 (日本・2017年)【2】 | 手術をした子どもの前腕骨折44例(うちLIPUS併用21例) | LIPUSを併用した方が骨のつく期間が短く、子どもにも安全に使えたと報告 |
| 槌指(マレット指)の骨折 (日本・2018年)【3】 | 平均13歳の子ども。LIPUS 8例と手術11例 | LIPUSの全例で指の機能の回復が「優」 |
| 初期の腰椎分離症 (日本・2019年)【4】 | 10〜18歳の選手82人(平均14.8歳) | スポーツ復帰までの中央値がLIPUS併用で61日、併用なしで167日 |
| 進行期の腰椎分離症 (日本・2017年)【5】 | 平均14.6歳の13人 | 骨がついた割合がLIPUS併用で66.7%、併用なしで10.0% |
| 舟状骨の骨折(手術後) (米国・2015年)【6】 | 思春期の14人 | 14人中13人(93%)で骨がつき、手術やその後の合併症はなし |
どの研究でも、LIPUSによる重い副作用は報告されていません。15歳の野球投手の肘の骨端線が閉じずに痛みが続いた例に使い、手術をせずに骨がついて投球に戻れたという報告もあります【8】。当院の腰椎分離症での使い方は「子どもの腰痛、分離症かも?初期の腰椎分離症とLIPUS」でご紹介しています。
成長軟骨(骨端線)への影響
保護者の方がいちばん心配されるのは「成長軟骨(骨端線)に当てて、背の伸びに影響しないか」という点だと思います。
米国の大学で行われた研究では、成長期のウサギの太ももの骨の成長軟骨の近くにLIPUSを当て、反対の脚と比べました。その結果、LIPUSを当てた側の方が骨の伸びが大きく、成長を止めてしまう変化(骨性架橋)は見られませんでした。研究者は「短期的には悪い影響はなかった」とまとめています【7】。
この実験は動物でのものですが、上でご紹介した子どもや中高生の研究でも、成長への悪い影響は報告されていません。当院では成長軟骨の位置もエコーで確かめたうえで、当てる場所を決めています。
安心して使っていただくために当院が大切にしていること
- エコーで確かめてから:骨の表面やケガの部位、成長軟骨の位置をエコーで確かめ、医療機関での画像検査の結果がある時はその内容もふまえて使うかどうかを決めます
- 必要な時に必要な期間だけ:骨折・疲労骨折・成長期の腰椎分離症など、骨がつくのを後押ししたい時に使います。経過を見ながら、骨がついてきたら終了します
- はじめにご説明:どんな治療器か・どのくらいの期間使うか・期待できることを、お子さんにも分かる言葉でお伝えします。ご不安な点はいつでもご質問ください
- 使っている間も安心:痛みや熱さはほとんどありません。気になることがあればすぐに止められます
- 料金:LIPUS(オステオトロン)は1回1,360円です(自費)
子どもを長い期間追った研究はこれから増えていく段階です。だからこそ当院では、使う理由がはっきりしている時に限って使い、毎回の来院で経過を確かめています。
骨折が疑われる時は、当院でエコーで確かめて応急の固定をしたうえで、連携する整形外科へその日のうちにおつなぎします。皮膚が切れて出血している・足にはっきりしたしびれがある時は、まずお電話ください。その場で受診先をご案内します。
よくある質問
Q. 子どもにLIPUSを使っても大丈夫ですか?
A. 子どもや中高生の前腕骨折・槌指・腰椎分離症・舟状骨の骨折に使った研究があり、重い副作用は報告されていません。当院ではエコーでケガの状態を確かめ、保護者の方とお子さんにご説明してから使います。
Q. 成長軟骨(骨端線)に当てると背が伸びなくなりませんか?
A. 成長期のウサギの実験では、成長軟骨の近くに当てても成長を止めてしまう変化は見られず、骨の伸びはむしろ大きくなっていました。子どもや中高生の研究でも成長への悪い影響は報告されていません。当院では成長軟骨の位置もエコーで確かめています。
Q. 痛みや熱さはありますか?
A. LIPUSの出力は温める目的の超音波よりはるかに弱く、痛みや熱さを感じることはほとんどありません。
Q. 何歳から使えますか?
A. 研究では10歳前後から中高生での報告が多くあります。年齢だけで決めず、ケガの種類と状態を確かめて判断します。
Q. LIPUSの料金はいくらですか?
A. 当院ではLIPUS(オステオトロン)は1回1,360円(自費)です。
参考文献
- Pounder NM, Harrison AJ. Low intensity pulsed ultrasound for fracture healing: a review of the clinical evidence and the associated biological mechanism of action. Ultrasonics. 2008;48(4):330-338.
- Ota T, Itoh S, Yamashita K. The efficacy and safety of combination therapy of low-intensity pulsed ultrasound stimulation in the treatment of unstable both radius and ulna fractures in children. Biomed Mater Eng. 2017;28(5):545-553.
- Ota T, Itoh S, Matsuyama Y. Comparison of treatment results for mallet finger fractures in children between low-intensity pulsed ultrasound stimulation and Ishiguro’s method. Hand (N Y). 2018;13(1):80-85.
- Tsukada M, Takiuchi T, Watanabe K. Low-intensity pulsed ultrasound for early-stage lumbar spondylolysis in young athletes. Clin J Sport Med. 2019;29(4):262-266.
- Arima H, Suzuki Y, Togawa D, et al. Low-intensity pulsed ultrasound is effective for progressive-stage lumbar spondylolysis with MRI high-signal change. Eur Spine J. 2017;26(12):3122-3128.
- Carlson EJ, Save AV, Slade JF 3rd, Dodds SD. Low-intensity pulsed ultrasound treatment for scaphoid fracture nonunions in adolescents. J Wrist Surg. 2015;4(2):115-120.
- Rickert KD, Arrigoni P, Guzel CR, et al. Growth modulation by stimulating the growth plate: a pilot study. Ultrasound Med Biol. 2021;47(8):2339-2345.
- Botwin K, McMillen T, Botwin A. Low-intensity pulsed ultrasound therapy for a symptomatic persistent olecranon physis in an adolescent baseball pitcher. Clin J Sport Med. 2018;28(4):e82-e84.













