執筆・監修:今西 博昭(宜野湾スポーツ接骨院 院長/柔道整復師/日本超音波骨軟組織学会 評議員) プロフィールを見る ▼
「試合で相手とぶつかって膝の内側を痛めた。いつから練習に戻れる?」
サッカー・バスケットボール・ラグビー部の中高生と保護者の方から多いご相談です。膝の内側の靱帯(内側側副靱帯:ないそくそくふくじんたい)のケガは、プロサッカーでは膝の靱帯のケガの中で最も多く、およそ7割が相手との接触で起きていました【1】。タックルを受けたときや切り返しで膝が内側に入ったときに痛めやすいケガです。
この記事では程度(Ⅰ〜Ⅲ度)ごとの練習復帰の目安と練習に戻ってよいかの判断基準をまとめました。あわせて中高生で見落としたくない骨の端(成長軟骨板)のケガや前十字靱帯・半月板のケガのサインも解説します。ケガそのものについては膝の内側側副靭帯損傷のページでくわしく紹介しています。
先に答え:膝の内側の靱帯のケガ いつから練習に戻れる?
- いつから:普通に歩いて痛くない 膝を伸ばし切れて曲げも左右差が小さい 片脚でのジャンプや切り返しが怖くない がそろってから段階的に戻します
- 何日で:米国の大学フットボール選手の研究では 完全に練習へ戻るまでⅠ度で平均10.6日 Ⅱ度で平均19.5日でした【2】。靱帯が完全に切れたⅢ度では 対人の練習に戻るまで平均9.2週でした【3】
- どこまで:ジョグ→ダッシュ→切り返し→対人練習→試合の順に戻し 膝の内側が痛む・ぐらつく感じが出たら1つ前の段階に戻ります
- 前十字靱帯や半月板 成長期の骨の端のケガが一緒にあると 復帰までの道のりが大きく変わります
目 次
膝の内側の靱帯のケガとは 程度はⅠ〜Ⅲ度
内側側副靱帯は 太ももの骨とすねの骨を膝の内側でつなぐ帯のような組織です。膝が内側に折れ曲がる動き(外反:がいはん)を止める役目があります。そのため膝の外側から押される形で当たられたり 着地や切り返しで膝が内側に入ったりすると 靱帯が引き伸ばされて傷みます。
欧州のプロサッカー27チームを11シーズン追った研究では 試合中にこのケガが起きる割合は練習中の約9倍でした【1】。別の3シーズンの研究でも 130件のうち75%が接触で起きており タックルを受けた場面が最も多い状況でした【4】。
こんな症状なら内側の靱帯のケガかもしれません
- 膝の内側の骨と骨のつなぎ目あたりを押すと痛い
- 膝の内側が腫れている
程度の分け方(Ⅰ〜Ⅲ度)
| 程度 | 靱帯の状態 | 膝のぐらつき |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | 線維が引き伸ばされ 小さく傷んでいる | ほとんどない 押すと痛い |
| Ⅱ度 | 靱帯の一部が切れている | 外から押すと少し開くが 止まりがある |
| Ⅲ度 | 靱帯が完全に切れている | 外から押すと大きく開き 止まりがはっきりしない |
目安です。程度は膝の開き方や押したときの痛み エコーなどで総合的に判断します。
プロサッカーの研究では チームの医療スタッフが診察で分けた程度とMRIで分けた程度は92%で一致していました【4】。ただし ほかの靱帯や半月板が一緒に傷んでいないかの確認は別に必要です。
程度ごとの練習復帰の目安と装具
膝の内側の靱帯の部分的なケガは手術をしない方法で良い結果が得られ 完全に切れた場合も多くは手術をせずに回復を目指します【5】。研究で報告されている復帰までの日数を表にまとめました。
| 程度 | 研究での復帰の目安 | 装具(サポーター) |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | 平均10.6日で練習に完全復帰(大学フットボール)【2】 | 多くは不要 テーピングで補うことも |
| Ⅱ度 | 平均19.5日で練習に完全復帰(大学フットボール)【2】 | ぐらつきや痛みに合わせて使うかを決める |
| Ⅲ度 | 平均9.2週で対人の練習に復帰(大学フットボール)【3】 | 膝の横に支柱がある装具で 内側に開く動きを支える【6】 |
どれもほかの靱帯のケガがない場合の数字です。中高生では体の大きさや練習量がちがうため 目安として見てください。
装具はつけたほうがいい?
完全に切れたⅢ度のケガでは 膝の横に支柱のついた装具で内側に開く動きを支えながら 早い時期から曲げ伸ばしや太ももの筋トレを始める方法が報告されています。平均5.3年後の評価では それまでに報告されていた手術や固定による結果と同じくらいでした【6】。
一方でⅡ度のケガでは 装具を使った選手のほうが休んだ期間が長い(平均41.5日と31.5日)という結果もありました【4】。装具のせいで長引いたとは言い切れませんが 研究者は軽いケガでは毎回の装具は要らないかもしれないと述べています【4】。当院では 膝の開き方とエコーで見た靱帯の状態 生活や練習の動きを確かめてから 装具やテーピングが必要かを一緒に決めます。
保護者の方へ
リハビリの進め方を比べた質の高い研究はまだなく 決まった一つの方法はないとされています【5】。カレンダーの日数よりも 次の章の判断基準がそろっているかで戻す時期を決めましょう。練習に戻ってよいかの判断基準と戻す順番
復帰の目的は 痛みなく競技に戻るだけでなく ケガのきっかけになった要素を見直して次のケガを防ぐことにあります【5】。当院では 次の6つがそろったら「チームの練習に段階的に戻ってよい」と判断しています。
- 普通に歩いて痛くない:階段の上り下りや しゃがみ込みでも膝の内側が痛まない
- 膝が伸び切り 曲げも左右差が小さい:あお向けで膝の裏が床につき 正座に近いところまで曲げられる
- 押しても痛みが小さい:膝の内側の靱帯の上を押したときの痛みが ほとんどない
- 膝を外から押してもぐらつかない:ケガをしていない側と比べて 開き方や痛みに大きな差がない
- 太ももの筋力と片脚の動きが戻っている:片脚スクワットや片脚ジャンプで 膝が内側に入らず怖さもない
- エコーで靱帯の腫れが落ち着いている:靱帯の厚みや 周りのむくみが落ち着いてきている
1つでも当てはまらない場合は もう少し待ちます。
練習に戻す順番
1つの段階を痛みなく2〜3回こなせたら次へ進みます。
- ジョグ:まっすぐのジョグから始め 時間を少しずつ伸ばす
- ダッシュ:7割くらいの力から 少しずつスピードを上げる
- ステップと切り返し:サイドステップ→大きなカーブ→45度の切り返し→90度の切り返しの順に
- 競技の動き:ボールを使った個人練習 キックやジャンプシュート
- 対人の練習:1対1 ディフェンス練習 タックルやコンタクト練習
- 練習試合から試合へ:出場時間を短めから戻す
痛みのルール
練習中・練習後・翌朝のどこかで 膝の内側の痛みが強くなる 腫れが増える ぐらつく感じが出る ときは 1つ前の段階に戻ります。2回続けてそうなるときは ご相談ください。練習を休んでいる間にできること
- 膝の曲げ伸ばし 太ももの前の筋肉に力を入れる運動 脚を伸ばしたまま上げる運動
- 膝が90度まで曲がったら負荷をかけた筋トレへ(Ⅲ度の研究と同じ順【6】)
- お尻や体幹 上半身のトレーニング 痛みが出ない範囲での自転車
中高生は「骨の端のケガ」との見分けが大切
中高生の膝には 骨が伸びるための軟らかい層(成長軟骨板:せいちょうなんこつばん)が 太ももの骨の下端とすねの骨の上端にあります。大人と同じように膝の内側を痛めても 靱帯ではなくこの骨の端が傷んでいることがあります。
米国の報告では 15歳のアメリカンフットボール選手が膝の外側に当たられ 最初は内側の靱帯のケガと考えられていました。普通のレントゲンでは異常がなく 膝に力をかけて撮ったレントゲンとMRIで 太ももの骨の端(成長軟骨板)のケガと分かりました【7】。膝の周りの骨の端の骨折29人を平均66か月後に調べた研究では 48%に靱帯のゆるみが残っていました【8】。骨の端のケガと靱帯のケガは 一緒に起きることもあるということです。
成長期の内側の靱帯のケガについての総説でも 成長期ならではの合併するケガがないかを含めて膝全体を確かめることが大切とされ 画像では複数の方向からのレントゲンや膝に力をかけて撮るレントゲンが挙げられています。成長期でも多くは手術をせずに 装具や練習の調整とリハビリで回復を目指すとされています【9】。
似ている膝の内側の痛み
| ケガ | 痛む場所 | 見分けるヒント |
|---|---|---|
| 内側側副靱帯のケガ | 膝の内側 骨と骨のつなぎ目の上や下 | 膝を外から押すと内側が痛む |
| 骨の端(成長軟骨板)のケガ | 膝の関節より少し上や下の骨そのもの | 骨をぐるりと押しても痛い 体重をかけにくい |
| 膝のお皿の脱臼(MPFL損傷) | 膝のお皿の内側のふち | お皿が外へずれた感じ すぐに大きく腫れる |
| 内側の半月板のケガ | 膝の内側の関節のすき間 | 引っかかる 膝が伸び切らない |
目安です。いくつかのケガが重なっていることもあります。
膝のお皿の脱臼についてはMPFL(内側膝蓋大腿靱帯)損傷の記事もご覧ください。
前十字靱帯や半月板も傷んでいない? 疑うサイン
内側の靱帯が完全に切れたⅢ度のケガでは 80%にほかの靱帯のケガが一緒にあったと報告されています。とくに前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)のケガがあるかどうかで その後の経過が大きく変わります【10】。Ⅲ度でも手術をせずに対人練習へ戻った大学フットボール選手の研究では 前十字靱帯のケガがある人を除くことが成功の鍵とされていました【3】。
前十字靱帯のケガを疑うサイン
- ケガをしてから数時間のうちに 膝全体がパンパンに腫れた
- 膝が「ガクッ」と抜ける 外れるような感じがある
- 着地や切り返しで 接触なしに膝をひねった
- 膝を曲げ伸ばしすると 引っかかる・伸び切らない(半月板のケガも疑います)
ケガの直後に膝の中に血がたまった85膝を関節鏡で調べた研究では 72%に前十字靱帯の損傷があり 半月板の損傷も多く合併していました【11】。同じ研究では 「ブチッ」という音や感覚は前十字靱帯が切れていた膝で36% 切れていなかった膝でも33%にあり 音だけでは見分けられませんでした【11】。すぐに膝全体が腫れたときは 音の有無にかかわらず前十字靱帯のケガを疑います。
前十字靱帯のケガを確かめる徒手検査について日本の研究グループがまとめた報告では よく使われるラックマンテストで前十字靱帯のケガを見つけられた割合(感度)は79%でした【12】。一つの検査だけでは見逃しが起こりうるため 当院では複数の検査とエコーを組み合わせて確かめます。前十字靱帯のケガや骨折が疑われるときは 応急の固定をして連携する整形外科へその日のうちにおつなぎします。
早く戻るために当院でできること
- エコーで靱帯の腫れと連続性を確認:膝の内側の靱帯の厚みや 線維がつながっているか 周りのむくみを左右で見比べます。成長期では骨の端(成長軟骨板)に段差や腫れがないかもあわせて見ます。エコー観察は別料金なしで行います
- 応急の処置と連携:前十字靱帯のケガや骨折が疑われるときは 応急の固定をして連携する整形外科へその日のうちにおつなぎします。骨折と分かった場合は 医師の同意のもとでLIPUS(骨折用の超音波治療器)も活用できます
- 運動療法:膝の曲げ伸ばし 太ももとお尻の筋力 片脚での着地や切り返しの練習を 段階的に進めます
- 戻し方の相談:判断基準がそろったかを確かめ 部活の予定に合わせて考えます
エコーで膝の内側の靱帯のケガを見つける力を調べた9件の研究(713人)のまとめでは 見つけられた割合(感度)が83% ケガがない人を正しく「ない」と見分けられた割合(特異度)が96%でした【13】。エコーは体への負担がなく 膝を動かしながら見られることや 回復の経過を確かめるのに役立つことが利点とされています【14】。院長はエコー観察歴19年です。
当院は宜野湾市伊佐にあり 駐車場があります。受付は平日 10:00〜14:00/16:00〜21:00 土日祝 10:00〜13:00/14:00〜17:00(水曜午前は休み)です。部活の後や土日の試合の後にも来院いただけます。
すぐに相談してほしいサイン
- ケガの直後から膝全体が大きく腫れた 膝が「ガクッ」と抜ける
- 膝が伸び切らない 曲げると引っかかる
- 膝の関節より少し上や下の骨を押すと強く痛む
- 試合が近く 練習に戻ってよいか迷っている
当院ではエコーでその場で状態を確かめ 前十字靱帯の損傷や骨折が疑われるときは応急の固定をして連携する整形外科へその日のうちにおつなぎします。最初の窓口は当院で大丈夫です。ケガで困ったら まず宜野湾スポーツ接骨院へご相談ください。
よくあるご質問
Q. 膝の内側の靱帯のケガは何週間で練習に戻れますか?
Q. 装具(サポーター)はつけたほうがいいですか?
Q. 前十字靱帯や半月板も傷んでいないか心配です。
Q. 成長期だと何か違いますか?
Q. 部活の後や土日でも見てもらえますか?
関連ページ
練習に戻っていいか迷ったら 戻る前にご相談ください
宜野湾スポーツ接骨院(沖縄県宜野湾市伊佐)では、エコーで膝の内側の靱帯と骨の端を確かめ、練習に戻る時期と戻し方をご提案します。必要なときは連携する整形外科へその日のうちにおつなぎします。
受付時間:平日 10:00〜14:00/16:00〜21:00 土日祝 10:00〜13:00/14:00〜17:00(水曜午前は休み)
駐車場あり
参考文献
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